監修:行政書士 渡邉徳人(行政書士事務所WITHNESS 代表・熊本県行政書士会 第05430405号)最終更新日:
建設業の社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)への加入は、いまは建設業許可の要件になっています。このページでは、許可・経審・熊本県の発注工事のそれぞれで社会保険がどう扱われているかと、建設業に特有の建設国保と労働保険の二元適用をまとめます。
3つの場面での扱い
| 場面 | 社会保険の扱い |
|---|---|
| 建設業許可 | 2020年10月から、加入が許可(新規・更新)の要件です。 |
| 経営事項審査 | 2026年7月から、未加入の減点項目はなくなりました。 |
| 熊本県の発注工事 | 元請が未加入業者と下請契約を結ぶことは認められていません。 |
建設業許可:2020年10月から加入が要件に
2020年(令和2年)10月1日から、適用事業所に該当する建設業者は、社会保険に加入していることが建設業許可(新規・更新)の要件になりました。未加入のままでは、許可を受けることも更新することもできません。許可の申請で確かめられる書類は建設業許可の社会保険の要件をご覧ください。どの保険に加入が必要かは、事業所の形によって決まります。
| 事業所 | 健康保険・厚生年金保険 | 雇用保険 |
|---|---|---|
| 法人(役員1人だけの会社も含む) | 加入が必要 | 労働者を雇っていれば加入が必要 |
| 個人事業(常時5人以上を使用) | 加入が必要 | 労働者を雇っていれば加入が必要 |
| 個人事業(常時5人未満を使用) | 適用除外(国民健康保険・国民年金) | 労働者を雇っていれば加入が必要 |
許可の申請や更新では、加入を確かめる書類として、健康保険・厚生年金保険の保険料の領収証書や、労働保険の申告書と領収証書などを提出します。
経営事項審査:2026年7月から審査項目ではなくなった
以前の経審では、雇用保険・健康保険・厚生年金保険のいずれかに未加入だと、1つにつき40点が社会性等(W)から減点されていました。
許可の更新期間は5年のため、2025年10月以降はすべての許可業者が加入を満たしていることになります。そこで、2026年(令和8年)7月1日以降の申請から、この減点項目は削除されました。あわせて、労働保険の申告書や社会保険料の領収書も、経審の確認書類から外れています。改正後のW点の項目は社会性等(W)の評価項目と点数をご覧ください。
熊本県の発注工事:未加入業者との下請契約は禁止
熊本県は、県が発注する建設工事について、元請業者が社会保険の未加入業者と下請契約を結ぶことを認めていません。2019年4月から一次下請、2020年4月からは二次以下を含むすべての下請が対象です。
元請は、下請の加入状況を確かめましょう
特段の事情があると県が認めた場合は、指定期間内に加入することを条件に下請契約ができます。ただし、期間内に加入が確認できないと、元請業者に違約金の請求・指名停止・工事成績評定の減点といった措置がとられます。
建設国保
同じ種類の仕事をする人を組合員として、国民健康保険を運営する組合を国民健康保険組合といいます。建設業の人を対象にした国保組合が建設国保で、全国に30以上あります(建設連合国民健康保険組合、全国土木建築国民健康保険組合、中央建設国民健康保険組合、全国建設工事業国民健康保険組合など)。
- 加入する人おもに、常時5人未満を使用する個人事業所の事業主・従業員と、一人親方が加入します。
- 保険料協会けんぽのように給与から計算するのではなく、年齢・就労の形・家族の人数などで決まります。保険料は全額本人の負担で、事業主の負担はありません。
- 給付医療費の自己負担は市町村の国保と同じ3割です。組合によっては、入院で仕事を休んだときの傷病手当金などもあります。
法人成りしても建設国保を続けられる場合(適用除外承認)
法人や常時5人以上を使用する個人事業所は、健康保険の適用事業所になるので、原則として協会けんぽなどの健康保険に加入します。ただし、次のような場合は、日本年金機構(年金事務所)に申請して健康保険の適用除外承認を受ければ、建設国保に加入したままでいられます。
- 法人成り・人数の増加建設国保の組合員を使用している個人事業所が、法人になったり、常時5人以上になったりして健康保険の適用事業所になるとき、すでに組合員である人。
- 組合員が会社を設立建設国保の組合員が、法人などを設立して健康保険の適用事業所になるとき、その組合員本人。
- 承認を受けた事業所に就職適用除外の承認を受けた人がいる事業所に、新しく使用されることになった組合員。
申請は、原則として、適用事業所になった日(就職した日)から14日以内に、加入している建設国保を通して行います。承認を受けた人は、許可の申請や更新でも、健康保険は「適用除外」として扱われます。
厚生年金保険には、適用除外はありません
建設国保に残れるのは健康保険だけです。法人や常時5人以上の個人事業所は、厚生年金保険には加入が必要です。
労働保険(労災保険・雇用保険)
労働保険は、労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。建設業では、労災保険の扱いがほかの業種と違うため、許可の申請や更新で労働保険の書類を出すときに、どの書類を出せばよいか迷うことがあります。
一元適用と二元適用
- 一元適用(一般の業種)労災保険と雇用保険をセットで、事業所単位で適用します。申告や納付も1つにまとめて行います。
- 二元適用(建設業など)労災保険は工事現場ごとに、その工事の元請がまとめて加入し、下請の労働者の労働災害も含めて補償します。雇用保険は会社が雇う労働者ごとに加入します。このため、労災保険と雇用保険の申告・納付を別々に行います。
建設業のほか、都道府県・市町村の事業、六大港湾の港湾運送、農林水産の事業も二元適用です。現場で働く人以外(事務員など)は現場の労災保険の対象にならないので、別に事務所の労災保険の手続きをします。
有期事業と一括有期事業
工期がある建設工事は、事業の期間が決まっている有期事業にあたります。そのうち、労災保険料の概算額が160万円未満で、請負金額(税抜)が1億8,000万円未満の工事は、まとめて1つの事業とみなされ、毎年度まとめて申告・納付します。これを一括有期事業といいます。
労働保険番号は最大3つ
二元適用の建設業者は、次のように労働保険番号が最大3つになります。
| 番号 | 対象 | 所掌 |
|---|---|---|
| 現場の労災保険 | 工事現場で働く人(下請の労働者を含む) | 1(労働基準監督署) |
| 事務所の労災保険 | 事務員など、現場で働かない人 | 1(労働基準監督署) |
| 雇用保険 | 会社が雇う労働者 | 3(公共職業安定所) |
労働保険番号は14けたで、「府県(2けた)・所掌(1けた)・管轄(2けた)・基幹番号(6けた)・枝番号(3けた)」の順に並んでいます。熊本県の府県番号は43です。労働保険事務組合に事務を委託している場合、基幹番号は9で始まり、末尾の数字で、雇用保険は2、現場の労災保険は5、事務所の労災保険は6、一人親方の特別加入は8と区別されています。
許可の申請・更新で出す労働保険の書類
雇用保険の加入を確かめる書類として、直近の労働保険の申告書(または納入通知書)と、それに対応する領収証書を出します。番号が複数ある会社は、雇用保険の番号(所掌3)の書類を選びましょう。
経審の申請は、まとめてお任せください
行政書士事務所WITHNESSでは、決算変更届(事業年度終了届)から経営状況分析、経審の電子申請、補正への対応まで、まとめてお引き受けしています。
出典:建設業法施行規則(令和2年10月1日施行)、国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」、熊本県の社会保険未加入対策、健康保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律、厚生労働省「労働保険の適用」。2026年10月時点の内容です。


